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ダウ理論
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この理論についてはすぐれた著作も多く、本稿で改めて述べることもないのかもしれないが、歴史的に見てはしめて需給関係に注目した、アメリカのテクニカル分析の先駆けとも呼べるものであり、やはり簡単には触れておく必要があろう。
ダウ理論は純粋なテクニカル分析の理論であるが、意外にそう捉えていない向きも多い。もともとは株式市場の予測が目的だったのではなく、景気動向のバロメーターとして発案されたものと考えられる。
チャールズ・H・ダウの没後、ダウ理論と名付けられた彼の原理は『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙に書いた論説が基になっており、後にウィリアム・P・ハミルトンやR・レアなどが発展させたものである。
ダウは平均株価の概念を導入した最初の人であるが、ダウ理論で用いるのは、二つの平均株価(工業株平均・運輸株平均)の終値べースである。ザラ場は取っていない。ザラ場は操作がしやすく、騙しが多くなるという理由からである。
ダウ理論の考え方で、平均株価の概念とともに重要なことは、いったん始まったトレンドは反転が証明されるまで継続するということであろう。
さて、ダウ理論は、以下のようにまとめることができよう。
@ 平均株価は、市場参加者すべての活動を反映する。不可抗力の自然災害ですら、すぐに織込む(この考えは、日本のテクニカル分析と同じものであり、洋の東西を間わず、テクニカル分析の基本的発想である)。
A 相場には三つの波動(トレンド)がある。長期トレンド(Major
or primary trend.主要波動)、訂正トレンド(Secondary
trend.ニ次波動)、短期トレンド(Minor trend)である。また、短期トレンドより小さい動きとして、日々の変動(Daily
fluctuation)がある。
長期トレンドは一年以上数年にわたる。こと、ダウ理論に関しては、ブル相場あるいはベア相場という表現は、長期トレンドについてのみいうのがふさわしいとする。当然、最も重要なトレンドである訂正トレンドは三週間から数ヶ月続く。一般には、価格にして長期トレンドのほぼ三分の一から三分の二の反動となる。通常は、二分の一の訂正に終わるとする。
ダウ理論にとって、一番困難なのが、この訂正トレンドの認識である。短期トレンドや日々の変動での予測は間違いが生じやすく、特に長期投資家にとっては意味が薄い。
B ライン(ボックス。平均株価の変動が五%以内の保合)はアキュミュレーン(Accumulation.買い集め)か、ディストリビューションDistribution.売り抜け)が密かに行われている状態で、長期トレンドの第一段階である。
訂正トレンドの代りにラインができることもある。むしろ、長期トレンドの第一段階であるよりも、中段保合で、元のトレンドに戻ることのほうが多いともいう。
C 出来高は、株価が長期トレンドの方向に動くにつれて、増大する傾向にある。訂正トレンドにあっても、同様のことが見られる場合がある。
D ピークとボトムが連続して右上がりとなる時は強気であり、連続して右下がりとなる時は弱気である。
E 一種の株価平均では誤りに陥りやすいという観点から、二つのダウ平均による確認が必要である。工業株平均と運輸株平均で同じシグナルが出てはじめて前記Dが活用できるとする。平均株価の他方で確認が取れない場合、何のシグナルもなかったのと同じこととなる(確認の失敗)。
長期トレンドの反転は二つの平均がともに反転を示したときにしか起こらない。逆に、いったんトレンドが確認されれば、過去に拘泥せず、ついていかざるを得ないとする。
二つのダウ平均に工業株平均と運輸株平均を用いる理由は、本当に健全な経済状態であるなら、この二つはともに買われるはずだとの見方による。物流が活発になって在庫が掃ければ、本格的な生産活動にはいりやすいということだろう。だだし、運輸株は、昔は鉄道株であったものが時代とともに変更されたもので(当時、鉄道は代表的企業であったため、二つの平均の一つに選ばれたという意見もある)、工業株平均自体の銘柄選定も徴妙な間題を含んでいる。
ダウ理論では、工業株平均と運輸株平均のシグナルが期間的に近いほど、そのシグナルは強いという。しかし、工業株平均と運輸株平均のシグナルの有効な期間については言及していない。また、ダウ理論ではトレンドそのものの期間についても予測できない。シグナルが遅すぎるという批判もある。
ダウ平均は単純平均株価とは違うことも忘れてはならない。(ダウ平均のマジックと呼ばれる現象がそれでありエリオット波動論〈後述〉においてもエリオッツトはそれを斟酌して考察していた可能性もある)
ダウ理論は、以上のような欠点がある。詰まるところ解釈の間題であり、体系だって運用することが重要なのであろう。
さて、以上がダウ理論の概略である。
これを外国為替市場に当てはめて考えると、どうであろうか。
私見では、外国為替相場にあっては、アキュミュレーションもディストリビューションも、お互いの裏返しにすぎなく、売りも買いも同じことであり、あまり考えなくてよいと推量する。アキュミュレーションはディストリビューションでもあるわけだ。
外国為替相場の特徴のひとつに、どんなに下落した後でも実需の売りはあり、どんなに上昇した後でも実需の買いは残るということがある。(この点で株式相場などと若干の相違があり、商品相場に近いのかもしれない)従って、下方でのラインの形成は、たとえ株式相場では底練りと見られるようなパターンであっても外国為替相場では中段保合となることもあり注意が必要である。
出来高に関しては、ダウ理論でも、決定的な条件とは見ていない。外国為替相場でも、出来高の把握が困難という理由もあり、あくまで参考程度にとどめておくべきであろう。
ダウ理論は基本原則として大部分の株式は一緒に動くということに注目したものである。外国為替相場にあっても、ドル対他通貨という見方が可能であろう。円もマルクもポンドも、対ドルでは同じような動きとなる場合が多いことを考慮に入れるべきだと考える。もちろん、超短期的あるいは長期的には、これらの通貨の描く軌跡は同じではないが、中期的には、全く掛け離れた動きをするわけでもない。例えばドル円でドル売りのシグナルを認識した時に、他通貨ではどうかを確認することは無駄ではあるまい。
また、通貨のインデックスも参考になろう。例えば、USドルに関してであれば、連邦準備制度理事会が公表しているドル・インデックスがある。世界貿易加重平均のインデックスである(余談ながら、各種通貨の分析にまで手がまわらない外国為替を専門としないテクニカル分析の情報提供会社などは、ドル・インデックのみで外国為替相場のテクニカル分析を済ませてしまうこともあるようだ)。
〔注〕厳密には世界貿易加童平均ではなく、1972〜76年の平均を基準とした世昇貿易に占める10ヵ国(米国を除くG10およびスイス。即ち、西ドイツ、日本、フランス、イギリス、カナダ、イタリア、オランダ、ベルギー、スウェーデン、スイス)の貿易の加重平均をもとに算出したインデックスである。1978年8月に改定されている。
このドルのインデックスの間題点は、
@ ウェイトづけを決める基礎となった統計が古い(西ドイツ20.8%、日本13.6%などとなっており、またNIES通貨が含まれていない)
A ウェイトづけが改定になれば、一瞬にして数値が急変してしまい、過去との連続性が断たれる(個別銘柄の株価チャートに現れる権利落ちのような状態となる。なお、株価の場合では、権利落ちの前後も同じ株であることに違いはないが、通貨インデックスの場合は改定の前と後では数値の持つ意味合いが違ってくるので、過去との連続性に拘らず、別のものと理解して取り扱った方が良いだろう)。
B 貿易にのみ注目しており、資本の流出入が全く反映されていない(貿易の動向は通貨の価値決定の一要因でしかない。ただ、資本の動向など<これも外債などの実需とスぺキュレーションに分けることも可能だが>を持ちこんだインデックスが作成できるとは思えない。たとえ、そうしたものを作れたとしても、さまざまな要素を組込めば組込むほど、そればキャッシュの相場動向に近いものとなってしまう)などであろう。
なお、このドル・インデックスはニューヨークのコットン・エクスチャンジで先物として、上場されている。もっとも、ここでの取引はあまり多いとはいえず、ディーラーの多く、ことにオプションのディーラーなどは指標として活用しているようである。(ちなみに、ドル・インデックスの先物は、はじめからインデックスとなっているので、通常の先物の場合と異なり、数値が大きい方がドル高を意味している)ドル以外でも、イギリス・ポンド(スターリング・インデックス)やオーストラリア・ドル(TWI)のように、市場で結構注目されているインデックスを持つ通貨がある。これらも、その通貨を分析するに際して参考となると考える。
(注)TWI(Trade Weighted Index.貿易加重指数)はオーストテリア準備銀行が発表している貿易加重通貸バスケットの値のこと。オーストラリアの総輪出入量に占める貿易相手国の割合に応じて各通貨を加重平均したもの(TWIの場合は、世界貿易加重平均ではない)。オーストラリア・ドルを客観的に見る指標とされる。イングランド銀行が発表しているスクーリング・インデックスも同様のインデックスである。
日本円や独マルクにも、これらに近いものがあるが、前述のドル・インデックスの間題点以外に、市場の注目度、発表の頻度などについて、相場として見ていく上での有効性に疑間が残り、テクニカル分析には使用しづらいと考える。
(注)日本銀行調査続計局が発表している指標のひとつに実効為替レートがある。IMFのMERM(Multilateral
Exchange Rate Model. 多角的為替相場モデル)のウエイト(84年版)を用いて主要11カ国ベースで算出している。(FEDのドル・インデックスとはウェイトが随分異なる)
これまで述べてきたように、通貨インデックスには様々な作成基準が存在するが(あたかも購買力平価のようだ)、テクニカル分析の実践面でいえば、あれこれ考えるよりは、思い定めて一通貨一種類のインデックスを継続して見ていればこと足れりと考える。
さらに、ダウ平均のもう片方の平均の代りに各々の通貨の先物を使月してもよい。また、株式市場においては、例えば、ニューヨーク市場と東京市場のそれぞれの平均を二つの株式平均に代えて使うこともできるが、外国為替相場では市場が継続しているという特殊性から市場間比較は有効とは思えない。
整理して記せば、確認のための指標として、
@当該通貨以外の通貨のキャッシュ
A通貨インデックス、あるいは、その先物
B当該通貨の先物
などを使月することができよう。なお、こうした確認の仕方はダウ理論に限らず、他のテクニカル分析手法上も有効だと思われる。
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