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| 4)購買力平価説 1920年代にアメリカの経済学者カッセルが1914年に唱えた説で「為替レートは通貨の購員力に依存する」という考えである。購買力とは簡単にいって物価の裏返しで、物価が上昇すれば通貨の価値すなわち購員力が低下し、他国と比べて、その国の通貨の価値は下がり、安くなる。サービスなども含めて、輸出製品の競争力がなくなり、収支は悪化、延いては、外国為替相場にそれが反映されるとするものである。 たとえば、日本のインフレが激しく、物価が外国と比べて割高だったとすると、日本の輸出競争力は落ちる。これは経常収支のマイナス要因であり、すなわち円安要因となる。 長期的には(2―4年周期)条件付きで、この説は正しい。購買力は生産性(設備と労働力。最近の説ではこれに技術水準が加わる)を反映したものであり、基本的には、貨幣価値とかけ離れた為替相場は維待できないものと考えてよい。ただし、短期的には、人、物、金の移動がかなり自由な経済圏の場合以外は当たらないケースがままある。世界的な「一物二価」が成立する条件下でなければ当てはまらないのである。 この説の欠点は基準時点の取り方および物価上昇の根拠となる指標の選択への疑間であろう。ドル・円の場合、一般には、1973年基準の工業製品卸売物価とか輸出物価ベースの購員力平価がよく使われる。サービスなどは国境を越えて移動して競争しないほうが普通だからだろうが、消費者物価べ−スでも理論的には構わないはずである。そうした基準が選ばれる埋由は明確ではない。その意味で、われわれが日常生活で感じるドルの購員力と実勢レートのギャップは埋まることはない。 あるエコノミストは、冗談めかしながら、幾らでも御希望の購員力平価を調合してざしあげます、と私に言ったことがある。また、エコノミストはこれを見るので損をするというジョークもある。また、資本の動向など、その他を考慮しないことも、購買力平価説の限界となっている。 さらに、本質的な欠点は可逆性、つまり、因果関係の方向性にあると考える。購員力平価説だと物価が与件であり、物価が決まって外国為替相場が決定されるという立場である。しかし、実際は物価が外国為替に影響を与えるのみでなく、外国為替のレートが物価に影響を及ぼすこともあり、単純な相関関係というわけにはいかないのである。局面によって独立変数と従属変数が入れ替わる。また、そうした相関関係があったとしても、いつまでも一定であろうはずもないのである。 5)国際収支説 この説は古くからあって、アダム・スミスやジョン・スチュアート・ミルにまでさかのばることができるが、第一次世界大戦後のゴッシェンに代表される説である。 外国為替相場は需給で決まり、需給は国際貸借状況によって決まるというものだ。つまり、経常収支に注目するのが国際収支説である。物価も重要な要素に違いないが、現実には為替相場は為替の売買によって決まり、為替の売買が経常収支となって現われる、と考えるのである。 国際収支は経常収支と資本収支に大別できる。資本収支とは、要するに金の貸借。経常収支はそれ以外、すなわち、物やサービスの取引。経常収支には貿易収支のほか、経常的収支(貿易外収支、移転収支)を含んでいる。たとえば、運輸、旅行、投資収益、その他、軍や外交関係のサービス取引などがそれに当たる 日本の経常収支が赤字だと円を売って外貨を買い、外国に外貨で支払う必要がある。すなわち円安。逆に日本が黒字のとき、外国は外貨を売って円を買って日本に支払うので円高となる。 ここで、市場参加者間にもよく見られる間違いを指摘しておかねばならない。ここで述べることは経常収支に限った話ではなく、指標を見る場合の注意事項でもある。 本節で述べている事項は外国為替相場の変動要因であって、外国為替相場の将来予測のための材料であるとは限らないのである。今日発表された貿易収支統計が今後の外国為替相場に大きな影響を持っていない可能性は高いのである。事後的説明にすぎないケースもあるということだ。 貿易収支発表直後のマーケットのドタバタを見て外国為替相場は収支で動くと考える人は論外としても、統計が発表されるのは通関が過ぎてからであり、そこには大きなタイム・ラグがある。長いものだと受注から通関まで数年を要するものもある。計上基準も同一ではなく、いつ為替を予約したかも定かではない。ドル・円以外のレートはさらに信頼度が低くなる。また、工事代金の扱いなども不明瞭である。各国政府の統計が意外にずさんで誤差が多くあることも知っておかねばならない。ドレッシング(鉛筆を舐めること)が全くない保障もない。発表数値の一部分に推定値が使われる場合はなおのことだ。さらにいえば、情報は、その受け手側の反応を考慮されることもある。心理説とも関わるが、たとえば、政府による経済見通しはその点を掛酌する必要もある。 世界全体の国際収支の合計額は当然ゼロとなるはずだが、0ECD発表の最近の世界全体の経常収支は大幅な赤字が続いている。統計の時期およぴレートの間題以外にも洋上備蓄の原油の扱い、各国の武器輸出などの漏れなどもある。 以上がいわゆる国際収支説の説明であるが、昔は資本収支がほとんどなかったのでよかったが、「経常収支=国際収支」と見こしているところに問題がある。資本、特に、長期の債権債務の移動についても、考慮されるべきであろう。実際には経常収支の変化が市場の需給に与える影響は大きくないのである。 1981年ごろまでは経常取引に伴うフローからのフロー・アプローチが当たっており、累積経常収支によって為替レートは説明できたとされる。資本移動が制限されていたためである。 6)為替心理説 外国為替相場の変動要因の説の中に為替心理説と呼ばれるものがあります。為替心理説はフランスのアフタリヨンという学者が唱えた説で、ブレトン・ウッズ体制(固定相場)の下では、忘れられた存在でしたが、現在のような情報社会(自由変動相場)にあっては重要な説です。 外国為替相場は国際収支とか購買力平価では理解できないというものです。たとえば、第一次世界大戦後に「ドイツが膨大な債務を負う」というニュースが流れただけで、非常なマルク安となり、それがドイツの物価を引き上げました。これは購買力平価説の逆の流れが起こったと考えられます。つまり、人々の思惑が相場を動かすことがあるというのが為替心埋説です。たとえば、市場では1998年の円安によって人民元の切り下げが引き起こされるのではないかと思われていましたが、それからたった112力月後、今度は人民元の切り下げがあるだろうという思惑に基づいて円が安くなるというようなことが起こりました(通貨の増価・減価はどの国の通貨にも使える用法だが、切り上げ・切り下げは、固定相場や目標相場圏などの固定相場に準じる制度の通貨について使う用語。つまり、円について切り上げ・切り下げというのは誤り。切り上げ・切り下げは通貨当局が意思決定して行う増価・減価のことといえる)。 つまり、2力月の間で原因と結果を逆転させ、円に対する通貨アタックをかけるというようなことをマーケットは行います。為替心理というと、嘘っぽく聞こえなくもありませんが、要するに期待や不安心理がマーケットを動かすということです。 外国為替相場の将来予想の変化は海外資産の円ベースの収益率を変化させます。それが、外国為替相場を動かすことにもなります。ということは、ファンダメンタルズであろうが、国際収支説であろうが、期待の程度によって影響度が変わるともいえます。つまり、参加者がマーケットの方向性を形成するという意味において、マーケットは自己実現すると考えることができるわけです。 相場はデマでも動きます。はっきりとデマとわかるまでは、それなりの行動が要求されます。しかし、情報が事実かどうかの確認も難しいのです。仮に、デマが本当なら大変なことだと判断した場合、ほとんどのディーラーは、本当だという仮定のもとで行動します。そうすれば、情報があたかも真実であるかのように相場が動いてしまうという結果になるのです。情報がデタラメだと1人だけが知っていたとしても、その人が下手に反対の行動を起こしたりすれば、マーケットの餌食になってしまいます。誰もがその噂にしたがって行動すれば、その噂は生きているのであり、たとえ1人が「あれは嘘だ」といってみても仕方のないことなのです。 |
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